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【オランダのクリエイティブの現場から Vol.3】 すべてのプロジェクトに、必ず一つ「ユニーク」を |Exo Ape(ルールモント)

SHIFTBRAIN Inc.
SHIFTBRAIN Inc.
2026.06.20

本記事は、オランダにブランチがあるSHIFTBRAINによる寄稿です。同社のメンバーがオランダのクリエイティブエージェンシーを訪問し、現地で感じたことを全8回のシリーズとしてお届けします。

実際に話を聞いてみると、制作の進め方やチームの考え方には、日本との違いもあれば、意外と共通している部分もありました。各エージェンシーへのインタビューを通して、オランダのクリエイティブの現場で見えてきたものをまとめていきます。

シリーズ3回目に紹介するのは、オランダ南部の街・ルールモントを拠点とするデジタルクリエイティブエージェンシー「Exo Ape」です。

Exo Apeとは

Webby AwardやAwwwardsのSite of the Month(SOTM)を2度受賞するなど、数々の国際的なデザインアワードを獲得しているデジタルクリエイティブエージェンシーです。特徴として、先進的なデザインながらも使い勝手が良く、制作するサイトはどれを見ても新しさのあるUIを開発することに長けている会社です。

会社は3名から成り、それぞれテクニカルディレクター、デジタル / モーションデザイナー、クリエイティブディレクターと職種は異なりますが、プロジェクトの初期段階から全員がワンチームとして関わる体制をとっています。そのため、アイデア・表現・実装が分断されることなく、一貫した思想のもとでアウトプットが形成されていく点が大きな特徴です。

SHIFTBRAINのアートディレクターが選ぶ、EXO APEのイチオシ事例

事例1:Otto van den Toorn

画面内には大胆に写真が配置され、その中央にタイポグラフィが重なる構成となっています。極力UIを排除した設計になっており、余白感や写真のメリハリが非常に心地よく、見ているだけで世界観に引き込まれていきます。

また、ページ遷移に関しても、単純に画面を切り替えるのではなく、中央のタイポグラフィがシームレスに変化することで、UIそのものが一続きの体験として繋がっています。そのため、各ページを移動しているというよりも、ひとつの空間を探索しているような没入感が生まれています。

中でも特に印象的なのが、画面下部中央に配置されたボタンUIです。このUIは、まるでAppleのDynamic Islandのように、常にユーザー体験の中心に存在しながら、状態変化や遷移を自然に伝える役割を担っています。一方で、単なる演出的な存在ではなく、実際にクリックや移動の起点としても機能しており、既存のWeb UIにはない新鮮さと、直感的な使いやすさが高いレベルで両立されています。

また、このサイトが特に優れているのは、新規性の高いUIでありながら、ユーザーに操作を強要しない点です。視覚的には非常に新しい体験でありながら、触ってみると自然に理解できる設計になっているため、演出が体験を阻害していません。ページ遷移時のアニメーションについても、過剰な演出ではなく、コンテンツ同士を滑らかに接続するための動きとして機能しており、写真・タイポグラフィ・UIが互いに干渉することなく、場面に応じて自然に主役を切り替えながら体験を構成しています。

その結果、単なるポートフォリオサイトではなく、デザイン性と機能性を高いレベルで両立した、ひとつのデジタル体験として成立しているWebサイトになっています。

事例2:INVERSA

従来のサステナビリティ系サイトは説明中心の構成になりやすい一方で、このサイトは“スクロールを通してサービスを体験させる”ことに強くフォーカスしている点が非常に特徴的です。侵略的外来種をテーマにしたサステナビリティブランドのサイトでありながら、1セクション1メッセージを体現したような構成になっており、タイポグラフィや写真、UI演出を通して、ブランドの思想や世界観を直感的に理解できる設計になっています。

全体としては非常にシンプルな構成で、余白もたっぷり取られているため、圧迫感がありません。一方で、パララックスやスクロール連動による背景演出、カスタムマウスカーソルなど、演出面はスクロールしたくなる体験に強く振り切っており、気づけば自然と次のセクションへ進みたくなるようスクロールそのものがストーリーテリングとして機能しています。

特に印象的なのは、環境問題を扱いながらも、“ナチュラル”や“オーガニック”といった既存のサステナビリティ表現に寄せすぎず、インダストリアルなトーンで世界観を統一している点です。フォントやアイコン、UIのディテールに至るまで一貫した思想で設計されており、従来のエコブランドとは異なる、まるで未来感のあるインフラ企業やテクノロジーカンパニーのような先進性を感じます。

また、各セクションはアニメーション付きのスライド資料のように展開されていくため、難しいテーマを扱っていながらも直感的に理解できる構成になっています。演出も単なる視覚効果ではなく、情報同士を滑らかに接続する役割として機能しているため、最後までストレスなく読み進めることができます。

その結果、単なるサステナビリティブランドの紹介サイトではなく、“説明”ではなく“体験”によって思想を伝える、非常に完成度の高いブランディングサイトとして成立しています。

Exo Apeのものづくり

今回お話を伺ったのは、クリエイティブディレクターのRobbertさん、デジタル / モーションデザイナーのRonaldさん、テクニカルディレクターのRobさんの3人です。

同じ地域で育った3人が、同じスタジオをつくった

Exo Apeはどのように生まれたんですか?

Robbert:もともとは私とRonaldのふたりで立ち上げたスタジオです。3年ほど経ったころ、Robがフリーランスのデベロッパーとしていくつかのプロジェクトに参加してくれるようになって、強いつながりを感じてそのままジョインしてもらいました。ルールモントというこの小さな市で3人が出会えたのは、本当に幸運だったと思っています。

Rob:実は私たち3人は同じ地域出身で、学年は違いますがEindhovenにある同じ高校に通っていました。私とRonaldはインターン先も同じで、私はデベロッパーとして、Ronaldは当時デザイナーとして働いていました。

Robbert:自分たちの強みは、互いの専門分野を深く理解していることだと思います。Ronaldは元々デベロッパーでした。Robはデザイナーもやっていました。ですからお互いが考えていることや言語がわかるので、とてもスムーズに意思疎通・意見交換ができています。例えばデザインフェーズの段階で、実装において課題になりそうな部分を見つけることができます。また、プロジェクト初期のディスカバリーフェーズからRobにも入ってもらっているので、プロジェクトの初期段階から彼の技術的な視点から見た問題を発見・解決することができています。そこが大規模な会社との違いだと考えています。

Rob:プロジェクトのスタートからサイトの公開まで、すべて3人で対応しているので、全員がどのフェーズにも深く関わっています。

クリエイティブディレクターのRobbertさん

ディスカバリーから始まる、密度の高いプロセス

普段のプロジェクトは、どのように進めていますか?

Robbert:案件やスコープにもよりますが、基本的に3つのフェーズで進めています。まずディスカバリーフェーズに約1ヶ月。次にデザインフェーズで4〜5週間。最後に開発フェーズで5〜6週間です。UXデザインはディスカバリーフェーズに、インタラクションやモーションはデザインフェーズに含まれています。

ディスカバリーフェーズでは、最初のミーティングでクライアントが心の中に描いているビジョンやニーズを丁寧に聞き出します。その後、FigJamなどを使った3〜4時間の共同ワークショップを実施します。ブランドが持つべき感情や特性、サイト訪問者が最初に感じるべきことなどを明確にするためのさまざまなエクササイズを行います。スライダーで方向性を選んでもらったり(例:エレガントか、正確か)、ビジュアルの好みを選んでもらったり。Pinterestなどから集めた写真やイラスト、ウェブサイトなどをもとにクライアントが選んだビジュアル例をもとに、スタイルフレームやムードボードを作成します。

提案は通常、複数の方向性を出さずに一つに絞ります。確信を持った方向性だけを提示する、というスタンスです。ワイヤーフレームに色・タイポグラフィ・画像を加えることで、クライアントが全体の雰囲気を早い段階で把握し、フィードバックできるようにしています。

Rob:ワイヤーフレームの段階から、かなり詳細まで詰めています。単なる骨格図ではなく、タイポグラフィなども細かく定義された、デザインそのものと見間違えるほど洗練されたものです。これによってインタラクションやアニメーションの方向性を早期に固め、プロジェクトの複雑さを初期段階で把握できます。3D要素が必要になりそうな場合は、ディスカバリーの段階からプロトタイプを作ってテストし始めることもあります。実装にどれくらい時間がかかるかを早めに検証することで、必要なリソースの見通しを立てられます。

もちろん、全員がスコープを常に意識しているので、ときには「少しやりすぎだな」と感じた時に引き戻す判断も必要になります。

「Amaterasu」プロジェクトの裏側

実際のプロジェクトとして、「Amaterasu」はどのように進みましたか?

Amaterasu

Robbert:このプロジェクトは4〜5ヶ月かかりました。クライアントの要望はとてもはっきりしていて、自身のビジョンを投資家に伝え、投資を呼び込むための魅力的なデジタル体験を必要としていました。ただ、スタート時点ではサービスの情報がクライアントの頭の中にしかなく、まずはそれを形にするところから始まりました。抽象的なアイデアを視覚化し、ストーリーとして伝えるのは非常に難しかったです。

ワイヤーフレームの段階からアニメーションの可能性も含めて設計し、写真素材がなかったためすべてをブラウザ上でデザインしました。WebGLを使って、ビジュアルをゼロから構築しています。

途中でクリエイティブの方向性がまだ十分に定まっていないことがわかり、追加提案が発生しました。WebGLを担当する外部のフリーランスデベロッパーも加わり、最終的には4人のチームで制作を進めました。WebGL、パーティクル、オーディオ同期などを組み合わせた、かなりリッチな体験になっています。アートディレクション、インタラクション、開発が密接に連携しながら進めた、このスタジオらしいプロジェクトでした。

すべてのプロジェクトに、必ず一つ「ユニークな要素」を

クリエイティブをつくる上で、意識していることはありますか?

Robbert:私たちがとても大切にしているのは、すべてのプロジェクトにそのブランドならではの「ユニークな要素」を少なくとも一つ加えることです。

そのアイデアは、コンセプトから生まれることが多いです。あるプロジェクトでは「ガラス」というコンセプトから、サイト全体に微妙なガラスの表現を取り入れました。別のプロジェクトでは「女性の頭」と「新しいグラデーションの背景」が、その作品を特徴づける要素になりました。こうした独自の要素があることで、プロジェクトは人々の記憶に残るものになります。

小規模なチームだからこそ、常に「どうすればこのプロジェクトを際立たせられるか」「どうすればユニークにできるか」と自分たちに問いかけています。その積み重ねが、どのプロジェクトも似たものにならない理由だと思っています。

新しいリリースのたびに「どうすれば水準をさらに引き上げられるか」を考え、以前のプロジェクトとは違う新しい要素を必ず取り入れることで、常に進化し続けることを意識しています。ローンチ後に細かな微調整を加えることもあります。完成して終わりではなく、公開してからも見直し続ける姿勢が、クオリティを保つことにつながっています。

インスピレーションは、映画・ゲーム・音楽など、あらゆるエンターテインメントから得ています。音楽を聴いていて、歌詞から何かが浮かぶこともあります。日常の中で見たもの・聞いたものが、気づけばプロジェクトのコンセプトに宿っていることも少なくありません。

オフィスにある置物

情熱とビジネスのバランスが、クオリティを決める

Robbert:プロジェクトを選ぶ際は、価値観が合うかどうかという「クリック感」を大切にしていて、クライアントを選ぶ立場でもあるという意識を持っています。

根底にあるのは、好きなことから始まったという原点です。情熱はクリエイティブにとって欠かせないもので、それが失われるとアウトプットの質にも直結してしまいます。一方で、金銭やタイムラインといったビジネス的な側面も無視できません。情熱とビジネスのバランスをどう保つか、その問いに向き合い続けています。

訪問したメンバーの声

石塚(アートディレクター / デザイナー)

今回訪問したスタジオの中でも、最も僕たちの出張拠点から離れた場所にあったのですが、どうしても訪れたいとメンバーにお願いして、スケジュールに組み込んでもらいました。それほどまでに、以前から強く憧れていたスタジオのひとつです。

3人という少人数体制だからこそ、全員がすべてのフェーズに関わるという、とてもユニークな進め方をされていて、自分にとっては理想的な制作体制のひとつでした。話を聞くことすべてに新鮮さと刺激があり、特に仕事の仕方だけではなく昨今の業界事情など、互いに意見を交わしながら対話できた時間がとても印象に残っています。また来年お会いする約束をしたので、メンバー共にまた会えればと思います!

金(モーションデザイナー)

3人だからこそのスピード感や、ワイヤーフレームの段階から実装を見据えて進める用意周到さ、そしてスキルセットが重なり合いながらも「デザイン/モーション/実装」をそれぞれが担い、連携してプロジェクトを納品していくスタイルに、終始刺激を受けたインタビューでした。

中でも、クライアントとの擦り合わせを細かく重ねるお話が特に印象に残っていまして、プロジェクトのすべてを3人全員で担うことで、方向性の変更が起きないほどスムーズに進行できている点に感銘を受けました。3人体制ならではの、外向けの段階的なPRの進め方や実績の見せ方など、広報の観点でも学びの多いお話を共有してくださり、感謝しています。

岡田(プロデューサー)

Exo Apeのオフィスは、アムステルダム中心部から電車で1時間ほど離れた郊外にありました。今回訪問したエリアの中でも、個人的にはかなり好きな場所で、街全体が開けていながらも、どこか洗練されていて、おしゃれな空気がありました。アムステルダム中心部とはまた違う魅力があり、移動している時間も含めて印象に残っています。

今回のインタビューで特に印象的だったのは、単にこちらが質問をして話を聞くだけではなく、僕たちが持っている情報や考えも共有しながら、かなりフラットに対話ができたことです。これまでのインタビューでは、海外の制作会社の考え方や進め方を学ばせてもらう場面が多かったのですが、Exo Apeとの時間は、こちらからも情報を渡しながら、お互いに意見を交換していくような感覚がありました。

特に、僕たちが今後グローバルに向けてPRしていく上での考え方や、どう見せていくべきかという部分について、かなり率直にアドバイスをいただけたのは大きかったです。彼らがどれくらいの期間をかけてつくり込んでいるのか、クオリティをどのように担保しているのかといった話も含めて、非常に参考になる内容が多くありました。

SHIFTBRAINとの違いとして強く感じたのは、チームの規模感です。Exo Apeは完全に少数精鋭のチームで、それぞれの役割やロールがかなり明確に機能している印象がありました。人数が少ないからこそ、一人ひとりが担う責任や専門性がはっきりしていて、その集合体として高いクオリティを生み出しているように感じました。

また、プロジェクトの進め方も印象的でした。特にプランニング段階から、インタラクションデベロッパーやエンジニアがしっかり関わり、ワイヤーフレームの段階から表現や実装の可能性を並行して検討している点は、彼らならではのユニークな進め方だと感じました。デザインと実装が後工程で分かれるのではなく、初期段階から一緒に考えられているからこそ、Exo Apeらしい緻密で完成度の高い表現につながっているのだと思います。

最後には皆さんと一緒に写真も撮らせていただき、本当に楽しいインタビューでした。学びも多く、対話としてもすごく刺激的で、またオランダに行く機会があれば、ぜひもう一度遊びに行きたいと思えるスタジオでした。

坪井(プロジェクトマネージャー)

規模が小さいからこそ全員がすべてのフェーズに深く関わっていて、お互いの専門性を理解し合い、その密度の高さこそが高いクオリティを生んでいる秘訣だと感じました。また、お話の中で印象的だったのは、制作の裏側や苦労したことまで含めて、とてもオープンに話してくださったことです。うまくいった部分だけではなく、悩んだプロセスや難しさも隠さず共有してくださる姿勢に、彼らの誠実さを感じました。そしてシフトブレインのことを知ってくださっていたのも、とても嬉しかったです。

さいごに

3人という小さなチームで、コンセプトから実装まで一貫して手がけるExo Ape。その強さは規模ではなく、互いの専門性を深く理解し合った関係性と、すべてのプロジェクトに「ユニークな何か」を宿そうとする意志から来ているように感じました。

次回紹介するのは、アムステルダムのResn。お楽しみに!

左から、石塚・岡田・Robbertさん・Robさん・Ronaldさん・金・坪井

Credits

Interview, Text:坪井、石塚、金、岡田(SHIFTBRAIN Inc.)
Edit:OMIMU(iDIDメディア編集部)

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