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課題の核心に迫り、事業開発から改善までの解像度を上げる——コンセント「プロトタイピングセッション」|コンセント×こぎそ (Lumilinks)

iDIDメディア編集部
iDIDメディア編集部
2026.05.29

デザインとテクノロジーの境界がシームレスに融けあい、生成AIが圧倒的な速度で進化する今、「つくる」ことの価値が劇的に変化しています。画面のUIをつくり、コードを書く——かつて専門的とされた作業が次々と自動化されていく中で、これからのデザイナーやエンジニアの「存在意義」は一体どこにあるのでしょうか。

そこで、デザインの力で複雑なビジネス課題を解決し続ける株式会社コンセントの川原田 大地さん・山口 陽一郎さんと、フロントエンドとデザインの境界で活躍する株式会社Lumilinksの小木曽 慎一さんによる鼎談を実現。小木曽さんの鋭い問いかけと、コンセントのおふたりが語る実践的な知見が交差する中で、「プロトタイピングセッションの真価」や「AI時代のデザイナーの深い価値」が見えてきました。

お話を伺った方々
  • 川原田 大地

    株式会社コンセント

株式会社コンセント サービスデザイナー
新規事業開発におけるリサーチ・分析や戦略策定、コンセプト開発など、業界やBtoB・BtoCを問わず多様なプロジェクトの設計と推進を担当。アイデア創発を目的としたワークショップのファシリテーターも務める。

  • 山口 陽一郎

    株式会社コンセント

株式会社コンセント UX/UIデザイナー
ウェブサイト構築におけるアートディレクション/デザインを主な活動領域とし、多くのプロジェクトに従事。サービス開発におけるUIの設計・デザイン、モーショングラフィックスを中心とした映像制作も手掛ける。

  • 小木曽 慎一

    株式会社Lumilinks

株式会社Lumilinks 代表取締役 / デザイナー&AIストラテジスト
受託制作会社でデザイナー・エンジニアとして勤務後、さくらインターネットでプロダクト開発に携わる。2020年にSmartHRへ入社し、プロダクトデザイナーとしてデザインシステムやプロダクト開発を担当。生成AIベンチャー、0→1スタートアップでのデザイナー経験を経て、現在はプロダクトデザインを軸に、AI活用コンサルティングや組織支援、コミュニティ事業を展開している。

外の視点から紐解く、コンセント流「プロトタイピングセッション」の真価

小木曽: 本日はよろしくお願いします。今日はぜひ、おふたりに切り込んで聞いてみたいことがありまして。というのも、コンセントさんがクライアントへ提供されている「プロトタイピングセッション」、これが外から見ていると非常にユニークなんです。世間一般で言われる「最終成果物のモックアップをつくって確認しましょう」というフェーズとは、根本的に見ている景色が違うのではないかと感じているのですが、実際はどうなのでしょうか?

川原田:まさにそのとおりなんです。私はもともと空間デザインや建築の領域からキャリアをスタートさせて、そこからサービスデザインへと領域を広げてきた背景があります。空間デザインにおいては、実際に物理的なハコを構築する前に「その空間で人はどう動き、どう感じるのか」という体験のプロトタイピングがとても重要だと思っています。コンセントでのプロトタイピングセッションも、ただ画面の見た目を確認する作業ではありません。

山口:川原田の言うとおり、私たちのセッションは「モノをつくる」こと自体が目的ではないんです。あるご相談で、「公共料金やエネルギー利用に関するリリース済みのアプリを見直したい」というケースがありました。しかし、私たちはいきなり画面設計や実装には入りません。まずは、「UXデザインの5段階モデル」* をベースに、課題を5つのレイヤーに分けて整理することを念頭に置き、実施しました。 そのうえで、ビジネスゴールに対してクリティカルと思われる箇所を手探りし、私が生成AIツールを使ってプロトタイプを作成しました。

川原田: すると、実際にユーザー視点で体験してみることで「毎日データを入力すること自体が負担になっている」とか、「AIから正論を提示されることで、かえってモチベーションが下がる」といった、数字や要件定義だけでは見えにくい課題が浮かび上がってきたんです。こうした既存サービスの改善においては、サービスを客観的に捉え直す必要があります。その点においてプロトタイピングセッションは、「本来どのような文脈で使われるべきなのか」「どこでユーザー体験が途切れているのか」といった論点を整理し、よりユーザーにフィットした形へ軌道修正していくための場として機能します。一方で、リリース前のサービスを対象とする場合には、事業側が想定している価値と、実際のユーザー体験との間にある「潜在的なズレ」を早い段階であぶり出し、方向性を見直すきっかけとして役立ちます。

小木曽: なるほど。アプリの完成形をイメージする前に、ユーザーの感情の動きや事業価値を早期かつ低コストで検証するための「問いの装置」としてプロトタイピングを機能させているわけですね。最初の段階でその「潜在的なズレ」をあぶり出せるかどうかが、その後のプロジェクトの成否をまったく違うものにしてしまう。事業の目的とユーザーの目的や感情が本当にあうかどうかを探るために、川原田さんと山口さんが現場で泥臭く対峙している様子がよくわかります。

川原田:ありがとうございます。「サービスデザイナー」と「UX/UIデザイナー」という役割の違うふたりが向き合うことで、AIには簡単に入力しきれないようなリアルな文脈を踏まえる。そのうえで筋のよい課題・論点設定と、それに対応する「解決策のビジョン」としてのプロトタイプを、一連のストーリーとして提示できることに強みがあると考えています。

株式会社コンセントのサービスデザイナー、川原田 大地さん
株式会社コンセントのUX/UIデザイナー、山口 陽一郎さん

高度化するプロトタイピングと「つくる」ことの相対化

小木曽: ただ、その「仮の形をつくる」というプロセス自体が、いまはとんでもないスピードで様変わりしていますよね。ここ数年で、Figma MakeやClaude Codeなどのコーディングエージェント、Lovableやv0のようなツールを使えば、本物のアプリと見紛うレベルの複雑な挙動やマイクロインタラクションを即座にシミュレーションできるようになりました。さらには生成AIが、プロンプトひとつでUIのベースを一瞬で叩き出す。おふたりは、この「つくる」ハードルの劇的な低下をどう見ていますか?

山口: 本当に短い期間で、業界の風景が様変わりしましたね。AIが要件を読み取り、瞬時に何十通りものUIパターンを生成し、さらにはフロントエンドのコードまで書き出してくれる。これまで「時間と労力をかけて作業する」ことで価値を生んでいた部分は、限界費用が限りなくゼロに近づいています。

小木曽: 私自身もフロントエンドの領域に足を踏み入れているからこそ、その焦燥感はよくわかります。実は最近、デジタルプロダクトデザインはパズルを組み立てることに近い、“オペレーション”のようなものなのではと、ふと気付いたんです。人間が数日かけていた実装や画面構築が、ツールとAIの力で数分で終わってしまう。パズルのピースをどう配置するかという「How」の大部分が自動化されていくなかで、我々デザイナーの役割は根本から再定義を迫られています。ただ、見方を変えれば、テクノロジーが「つくる」作業を肩代わりしてくれるからこそ、人間はより高度な「体験の設計」や「事業の論理」に専念できるようになったとも言えますよね。

株式会社Lumilinksの代表取締役とデザイナー&AIストラテジストを務める小木曽 慎一さん

山口:私もそう思います。技術の進歩によってデザインという“言葉”が帯びる意味や範囲が大きく変化している。それがデザイナーの役割の変化にも結びついています。

小木曽: ちょっと極端な言い方になって誤解を招くかもしれないんですが、実は僕、デザインがすごく好きな一方で、デザインが「嫌い」でもあるんですよ(笑)。

川原田: なるほど(笑)。そのあたり、もう少し詳しく聞いてもいいですか?

小木曽: 日本で「デザイン」という言葉を使うと、どうしても表面的な装飾や視覚設計の話に寄りがちじゃないですか。でも、僕らが普段向きあっているデジタルプロダクトの領域って、プログラミングコードとの相性が良すぎるんです。だから、ツールが進化し、AIが台頭してきた今、表面的な画面構成であれば大抵のものは自動でなんとか「つくれちゃう」んですよね。ネット上ではよく「AIの進化でデザイナーは終わった」なんて極端なことが言われます。「本当に終わったか?」と反発する気持ちもある反面、視覚設計をパズルのように組み立てるだけの作業であれば、「まあ、終わったかもしれないな」と腑に落ちる部分もあって。だからこそ、表面的なレイアウト作業に終始しがちな「デザイン」という言葉の狭い使われ方に、ずっと葛藤を抱えているんです。

山口: なるほど、その「嫌い」という言葉の裏には、デザインという行為をもっと広義で捉えたいという強い想いがあるわけですね。

小木曽: そうなんです。だからこそ、おふたりとお話ししていて、単なる「装飾」や「UIパーツの配置」といった表面的な話がまったく出なかったことがすごく嬉しくて。作業としてのデザインがテクノロジーに代替されるからこそ、プロフェッショナルが担うべき「真の領域」がどこに残るのか、その輪郭がより鮮明になってきているのを感じます。

AI時代に生き残るデザイナーの「真の価値」とは

小木曽: では、この「How」が自動化される大きなうねりの中で、デザイナーの「真の価値」はどこに向かっているのでしょうか。私ひとりの視点だけでなく、コンセントという組織で多様なプロジェクトを牽引するおふたりの哲学をぜひお聞きしたいです。

山口: 私は、デザインにおいて「観察する」「解釈する」「出力する」という3つのプロセスを大事にしていて、出力はテクノロジーが代替してくれるけれども、観察と解釈はまだまだ人が成立させていると考えています。AIがどれだけ優秀に「どうつくるか(出力&How)」を代替・サポートできるようになっても、そう簡単には代替できないものがある。それは、「なぜつくるのか(Why)」という根源的な問いに向きあい、事象を徹底的に観察して意味を解釈する力です。

川原田: だからこそ、プロトタイピングを行う前段階の「コンセプトメイキング」や「ビジョンデザイン」の重要性が、日を追うごとにより高まっていると感じます。結局のところ、「価値は人の内面において実感されるもの」なんですよね。「このサービスが社会に存在する意味は一体何なのか」「ユーザーの人生のどの文脈(コンテキスト)に寄り添うのか」など……。人の内側にある、潜在的な価値や感情の機微をすくい上げるには、人間同士の泥臭い対話や、社会への深い洞察が必要です。さらに、そこから生まれたアイデアを単なる発想で終わらせず、サービスや事業として形づくっていくためには、論理だけでは説明しきれない“熱量”が欠かせません。AIは「過去のデータに基づいた最適解」を100個提示することはできても、その中から「我々のブランド思想に合うのはこれだ」と決断し、血の通った意味を吹き込むことはできません。

小木曽: たしかに、テクノロジーがいかに発達しようと、最終的にそのサービスを使うのは血の通った「人間」ですものね。デザイナーが「きれいな絵を描く人」から脱却し、ユーザーの感情を観察し、経営層の抽象的なビジョンを「体験」へと翻訳して事業を牽引する。そうした「意味を創出する思想家」や「最適解へ導くファシリテーター」への飛躍が求められているのだと、おふたりの話を聞いて輪郭がクリアになりました。

鼎談は、東京・恵比寿に位置するコンセントのオフィス兼コミュニケーションスペース「amu(あむ)」で行われました

シームレスに融けあうデザインとエンジニアリングの境界線

小木曽: そうした高度なビジョンを実際のプロダクトに落とし込む際、デザインとテクノロジーの関係性も激変していますよね。僕は実装もやる立場として、デザインの意図をまったく損なわずに最高のユーザー体験を届けるためには、エンジニアリングの知識が絶対に不可欠だと感じています。デザインとテクノロジーが真の意味で溶けあう視点を持たなければ、もはや太刀打ちできない時代です。おふたりは、この境界線の融解をどう捉えていますか?

山口: まったく同感です。かつての「デザイナーが絵を描き、エンジニアに投げて、エンジニアがそれをつくる」というウォーターフォール型のバケツリレーでは、現代求められる品質には到底追いつけません。デザインの意図を解釈しながら、同時にデータ構造やAPIの制約といったテクノロジーの裏側を深く理解し、プロトタイプを用いて仮説検証のプロセスを日常的に、止まることなく行う体制が不可欠です。

川原田: その文脈で言えば、まさに小木曽さんのような、両方の視点と専門性をあわせ持つ「デザインエンジニア」の存在価値が極めて高まっていると思います。言い換えれば、デザインの「Why(なぜつくるか)」を深く理解しながら、実装の「How(どうつくるか)」の制約や可能性までを一気通貫で見据えることができる存在。テクノロジーの深い知見があるからこそ、技術的制約を逆手にとった斬新なUIを提案できる。逆に、デザインの意図を知っているからこそ、ユーザーの感情を揺さぶるようなマイクロインタラクションの実装にこだわることができる。そういう人がチームにひとりいるだけで、ビジョンとプロダクトの間の解像度が劇的に上がると同時に、その隙間を埋めることができる。結果として、プロジェクトの熱量もスピードも桁違いに跳ね上がると思っています。

小木曽: ありがとうございます、光栄です(笑)。でも本当に、デザインとテクノロジーはもはや分断されたプロセスではなく、ひとつの「体験」を生み出すための表裏一体の要素なんですよね。プログラミングというテクノロジーの限界を知っているからこそ「逆算して提案できるデザイン」があり、デザインが持つ細かなコンテキストを理解しているからこそ「書ける最適なコード」がある。コンセントのおふたりが、そうした領域横断的でテクノロジーと完全に融けあうアプローチを実践されているからこそ、生きたプロトタイピングセッションが成立しているのだと腑に落ちました。

コンセントが小木曽さんらによる「CrossRel 」主催のイベント「KNOTS 2026」へ出展したことが、本鼎談のきっかけとなりました
https://knots.crossrel.jp/
KNOTS 2026において「『余白』と『欲望』を味方につける——AI時代のデザインエンジニアリングと『越境』の作法」としてコンセントの小山直樹さんが登壇。「デザイン・AI・エンジニアリング 境界を結び、共創をひらくカンファレンス」と銘打つ同イベントにおいて、来場者から人気のセッションとなりました
写真上:KNOTS2026 での出展風景 写真下:小山さん登壇の様子

「型」に溺れるな。持続的な価値を生み出すための闘い

小木曽: 最後に、どうしてもおふたりにぶつけておきたいテーマがあります。現在の現場で非常に多い落とし穴についてです。ツールの進化にともなって、立派なデザインシステムやコンポーネントライブラリをつくる企業が増えましたが、往々にして「ツール」や「型」をつくること自体が目的化してしまっているように見えます。

山口:そういった話は、よく耳にします。実際、半年や1年かけて壮大なデザインシステムを構築したものの、実際のプロダクト運用にまったく活かされていなかったり、ルールが厳格すぎて現場のスピード感を削ぎ、結果的に形骸化してしまったりするケースは後を絶ちません。

川原田: デザインシステムやFigmaによる高度なプロトタイプは、体験を形づくるための重要な手段です。一方で、それらを整備すること自体が目的化してしまうと、本来届けるべき価値が見えづらくなってしまうこともあります。今、私たちに求められているのは、そうした「型」や仕組みを活用しながら、ユーザーや事業にとって本当に価値のあるサービスを、継続的に提供していけるかどうかだと考えています。

小木曽: コンセントのおふたりが言うと説得力が違いますね。綺麗なコンポーネント集をつくるのがゴールではない。それを使ってどれだけ早く市場に価値をデリバリーし、ユーザーのフィードバックを得て、事業をグロースさせていけるかがすべてですよね。AIの台頭によって、デザインシステムの構築やコード化自体もやがて自動化されていく。その時に「何のためにこのシステムを運用しているのか」という哲学が抜けていれば、組織はたちまち行き詰まってしまう。

山口: デザインシステムもプロトタイプも、つくって終わり、試して終わりではありません。それらによって利用者も自分もアップデートされます。そうした変化を受けて、つくり続けていく必要がある。最新のテクノロジーもツールも、あくまで本来の目的をサポートするためのものです。

川原田: 結局のところ、AIをはじめとするテクノロジーがどれほど進化し、制作のプロセスが自動化されたとしても、「人」と「社会」に泥臭く向きあい、その未来を構想する熱量こそが、これからのモノづくりに関わるすべての人にとって、ますます重要になっていく普遍的な力なのではと考えています。

小木曽: テクノロジーの進化によって、「つくる」ことのハードルは大きく下がりました。誰もがここまでの変化を予想しきれなかった今、私たちデザイナーは何を見つめ、どこで価値を発揮していくべきなのか。私自身が抱えていた問いに対し、コンセントのおふたりから極めて実践的で、かつ熱いアンサーをいただいた気がします。本日は本当にありがとうございました。

*ジェシー・ジェームズ・ギャレットにより提唱された、ユーザー体験のプロセスを「戦略」「要件」「構造」「骨格」「表層」の5つのレイヤーにわけて具体化するためのフレームワーク

◾️プロトタイピングセッションのご紹介
サービスデザインとUX/UIデザインの専門家がつくって試す、サービス開発を前進させるための「プロトタイピングセッション」(無料)を開始

◾️お問い合わせフォーム
コンセントへのお問い合わせはこちらより

※フォームへ遷移後、「その他」にチェックを入れていただき、お問い合わせ内容の冒頭に「プロトタイピングセッションの相談」とご記載ください。

Credits

Text, Edit:五十嵐正憲
Photo:山田秀隆

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