目次
「北海道」の電設会社が「九州」の制作会社に制作を依頼
まず、制作依頼の経緯からお聞きできればと思います。サイト公開時に音更電設代表の田中さんが「探して探して探して探して(モンブランさんに)たどり着いた」とポストされていましたね。
竹田:音更電設さんが今年の4月に50周年を迎えるということで、田中社長から直々にサイトリニューアルのご相談をいただいたんです。まず聞かれたのが「北海道からでも依頼が可能か」でしたね。
音更電設さんは北海道は十勝の音更町に本社を置く会社で、モンブランさんは九州。この、北と南の距離感にも驚きました。
竹田:北海道にも当然良い会社があるわけですが、多くの会社が依頼している道内の制作会社だとデザインが似てしまうという懸念もあり、そこで全国に視野を広げて探してみたら弊社のサイトがヒットしたようです。田中社長もビビッときたそうで、実績を見て何かやってくれそうと感じてくれたのかな、と。
福永:田中社長は日頃から色々な会社のサイトを見るのが好きということで、自社で作るならこだわりのあるところがいいと。「モンブランさんの実績は、どれを見ても、どこか他とは違う熱量を感じました」とおっしゃってました。

北海道でクライアントと3日間をともに。会いたいと思ったら即会いにいく
クライアントからはどのようなオーダーがありましたか。
竹田:設立50周年ということで「音更電設がやってきたことを振り返りたい」「採用に力を入れたい」の二点が先方のオーダーでした。ここから提案フェーズに入っていくのですが、提案段階においては、基本的にモンブランはディレクターがコピーライターとタッグを組んで、2人体制で進めるんです。このプロジェクトでは私が日頃から信頼を置いているコピーライター・プランナーの福永さんにお願いすることにしました。そしてオンラインよりも肌感を現場でリアルに感じたいと思い、早々に福永さんと十勝の音更町に行くことにしました。
初動が速いですね。音更町には何日ぐらい行かれたんですか?
福永:3日間です。ヒアリングの場も設けながら、社長と一緒に食事をしたり、現場を見にいったり、スタッフさんたちとお話しをしたり。現場も、場所を厳選して社長の車で一緒に回りました。そこで現場の空気を感じ、みなさんとの濃い3日間を過ごして、結果「音更電設って素敵な会社だな」と。ただ、このじっくり密にコミュニケーションを取る手法は、音更電設に限ったことではなく、私たちが毎回やっていることです。

毎回かなり時間をかけて、クライアントにお話をお聞きしているんですね。
福永:会いたいと思ったら即、会いに行きますし、まだ足りない、と思ったら、何度でも取材をさせてもらいます。初動の速さに田中社長も驚いていましたが、北海道と九州では文化も違いますし、社長も「大好きな北海道を紹介できることが嬉しい」と思ってくださったみたいです。
竹田:サイトを作るにあたって気をつけているのが「嘘をつくのはやめよう」ということです。嘘ではなく、音更電設がすでに持っているものをどう魅力的に引き出すか。今回それは現場に行って感じ取ることができたので、帰りにふたりで「いい企画が生まれそうだね(いい企画にしたいね)」と話したことを覚えています。
ウェブサイトの方向性 – 「社長」と「社員」お互いの想いを見えるかたちに
では、ウェブサイトで目指した方向性についてお聞きします。
福永:もともとは採用が大きなテーマだったんですが、北の大地での配電の仕事はとても過酷で、なり手がなかなかいないという現状がありました。でもそれは、配電という仕事の「かっこよさ」が伝わっていないということだと思ったんです。
社長がよく「配電工ってかっこいい」とおっしゃるんですけど、それならば私たちがその「かっこよさ」を伝えたい。そして、そのかっこよさを、採用以前に「今働いている人たち」に向けたものにしたいね、と。「社長の想い」と「社員の想い」、お互いが想っていることを「見えるかたち」にすることが第一歩だと思ったんです。

福永:裏コンセプトは「音更電設で働くスタッフ全員のために作ったサイト」。働いている人たちに、配電の誇りやかっこよさを改めて思い出してもらいたいと思い、そこから「音更電設で働く方々を主役にする」という軸で、言葉と絵を考えていきました。

「TOKACHI LIGHT.」というブランドワードについてもお聞かせいただけますか。
福永:北海道にも配電の仕事をしている会社が数多くある中で「十勝の灯」という打ち出しをしたかったんです。それまでも、社長とのお話の中で「十勝」の名前がよく出てきていたんです。とにかく広い北海道の中で「自分たちがどこを照らしているのか?」を考えたときに、社長が十勝平野に流れる空気のようなものを大事にされているんだな、と感じたんです。だから音更よりもっと広く「十勝だ」と。十勝なら北海道の人だけでなく、九州の人が聞いても分かるので、その広がりを意識しました。

ポイント① – 選抜ではなく「37人全員の光を捉えるサイト」に

では、ウェブサイトについてのお話を。やはり「TOKACHI LIGHT.」というワードとスタッフさんに光が当たるビジュアルが印象的ですね。
福永:実は3日間の視察を経て、この企画を考えはじめたときには、もうFVでの「TOKACHI LIGHT.」のようなワードと「光が当たっているビジュアル」が頭の中に浮かんでいたんです。ブランドワードと、スタッフを照らす光と、そしてこのスポットライトの象徴としての黄色い「まる」ですね。
竹田:コピーが力強くて、最初福永さんからもらったときからとてもいいと思ったので、言葉が引っ張ってくれるだろうと。それを体現する絵というところで、誰を撮るかも大事だと思いました。このモデルの方は熊本の大学生なんですが、北海道出身という不思議な縁もあってモデルをお願いしました。
この「37人全員の光を捉える」ところも印象的でした。選抜するのではなくスタッフ全員。しかもひとりひとりにキャッチコピーがある。

福永: 採用サイトだとインタビューコンテンツが必要ですが、だいたい選抜で5〜10人ぐらい選びますよね。でも、選ばれたその人が「会社の代表」みたいな見え方になってしまうのは違うのではないか、と。 もちろん会社の規模感にもよりますが、誰かをピックアップするのではなくて、全員が載ってたら全員が嬉しいし、本当の意味で「自分ごと」になるのではないかと思ったんです。
竹田:音更電設さんのサイトにおいては「37人をちゃんと大切にしていること」が一番大事だと思ったんですね。社長が社員をちゃんと見ている、社員も社長を見ている、というところを表現できたら、それは結果的に採用につながるはず。だからいわゆる採用の見せ方ではなく「中の人を大切にしていること」をしっかり伝えようと。
音更電設さんだから、このような見せ方になったのでしょうか?
福永:そうですね。実は、最初にお話を伺った際に、田中社長が会社に対して自信を持てていないようにも感じたんです。会社のあり方とか、スタッフに対してとか。「私はスタッフのことを本当にかっこいいと思ってるんだけど、みんなは本当に会社のことをいいと思ってるのかな?どう思いますか?」と。
でも実際に現場を回って、若手のリーダーの方や長く働いているスタッフさんたちに話を聞いてみたら、年配の方も若手の方も仲が良く、とても楽しそうに働いていて、むしろそれが印象的だったんです。だから、スタッフさんが自分たちの会社にも、仕事にも、誇りをもって働いていることを、ちゃんと社長に伝えたい、というのも軸にありました。この方向性は、現地に行かないと絶対にわからなかったですし、おそらく「全員紹介」という企画にもならなかったと思います。

ポイント② – 「THE SPOT LIGHT!」社長が修正を入れてくれたことが嬉しかった

この「THE SPOT LIGHT!」という特設サイトも印象的なコンテンツですね。
福永:50周年ということで「周年記念誌」を編集し、ウェブで展開したというイメージです。50年の歩みや歴史、現在、未来といった「これまで」と「これから」が伝わるページを作りたいなと。これこそ本当に、37人全員のために作ったコンテンツですね。

これらのコンテンツを通じて社長がスタッフを、スタッフが社長を知ることができる。
竹田: 社長が元ミュージシャンなので、それになぞらえて「音楽」がテーマなんです。
福永: その背景がめちゃくちゃ面白くてロックなんです。スポットライトの「ライト」にもかかっているし、これ以上ないなと。これも直接田中社長と話すことから生まれたコンテンツですね。
「LIGHT」をテーマに「本コンテンツ」と「THE SPOT LIGHT!」が表裏一体のコンテンツになっていますね。また、コピーも写真のクオリティも高くて、モンブランさんが作るサイトはコンテンツそのもののクオリティが常に高い。
竹田: 腕がいいカメラマンなんです。撮影に行った時は雨だったんですが、今回お願いしたカメラマンはそういうトラブルが好きで逆に燃えていて(笑)。結果、3日の間で、雨も、晴れも、曇りも全部撮れたので、振り返るととてもラッキーでしたね。

そしてここにも「37人全員キャッチコピー」が。
福永:そうそう、このキャッチコピー、当初は私が37人分書いたんですね。でも、最後の最後に社長が「この人のキャッチコピーはこういう感じがいいんだけど、どうかな?」と丁寧に修正を入れてくださって。どれも、愛情と遊び心にあふれるものばかりだった。私はそれが逆にとても嬉しかったんです。
修正が嬉しかった。
福永:やっぱり私は「社員一人ひとりをしっかり見ているからこそ、キャッチコピーが書ける」と思うんです。AIを使ったとか自分の手で書いたとかは関係なくて、ちゃんと人を見ていないとキャッチコピーはつけられない。そこにしっかりと修正が入ったのが、私にとっては印象的だったんです。

ポイント③ – サイトが完成していくにつれて、田中社長の自信がどんどん増していった
このサイトの中で一番気に入っているところをお聞きできればと。
竹田:私が印象的だったのは、田中社長の変化ですね。サイトができあがっていくにつれて、社長の自信がどんどん増していったように感じたんです。社長や会社の「武器にできるものになれた」という実感があったので、そこで役に立てたことがうれしかったですね。
福永:私はやっぱり「THE SPOT LIGHT!」ですね。2回の視察と撮影、社長への想いや従業員の方を鼓舞する気持ち、もしかしたらもう会えないかもしれないけど、ずっと幸せでいてほしいな、という自分の想いを全部込めたページになりました。40年近く会社にいらっしゃる専務の方に昔のエピソードを聞いたり、田中社長のお母様(先代の奥様)には手書きのメッセージをいただいたり。こんな風に、「全員野球」のように社員さんたちに参加してもらうところは、私の編集方針でもあるんですが。何も諦めなかったページになったな、と。

もしかしたらもう会えないかもしれないけど、ずっと幸せでいてほしい。遠い友人への手紙みたいですね。この「THE SPOT LIGHT!」にはそんな福永さんの想いも込められているのですね。
福永:えへへ…。
田中社長やスタッフの方からの反応はいかがでしたか?
竹田:田中社長からは「何よりも自分たちが満足できて、誇りがもてるサイトに仕上げていただき感謝してます」「入社した人たちは、ギャップを感じることがなく働けると思います!」とのコメントをいただきました。スタッフの方からは「全員で参加して作り上げた。自分も出ることで愛着が湧いた」「自社のホームページを誰かに見てほしい」という反応があったとのことで、そう言っていただけてとてもありがたかったですね。
モンブランのクリエイティブ① – 「でも、ちゃんぽんもおいしいんだけどな」
ブランディングにおいては、伝えたいことと内実がなかなか伴わない時もあると思います。竹田さんは「嘘はつきたくない」とおっしゃっていましたが、そのギャップをどう解消されていますか。
竹田:最初はお客さんから「こういうサイトにしたい」というオーダーからスタートすることは多いですが、でも「それって御社に似合ってないですよね」ということもやっぱりあります。お話を聞いていくうちに「開けてはいけなかった箱」を開けてしまうこともあります(笑)。でも、クライアントからすると耳が痛いようなことでも、相手を信じて、ディスカッションしながら伝えてみようと思っています。福永さんもよく「私たちって何屋さんかしら?」と(笑)。
福永:「うちの名物はラーメンだよ」と言われたとしても、「でも、ちゃんぽんの方がすげーおいしいんだけどな……」と気づいてしまうんです。ラーメンもないがしろにはしたくないんですが、一緒に作るんだったら「ちゃんぽんの方で今回やってみませんか」ということを、角が立たないようになるべくヘラヘラしながら伝えています(笑)。
音更電設さんの時はどうでしたか。
福永:今だとスタッフさんの名前もイニシャルだったりNGが多いこともありますが、ここで37人をしっかり出したかったのもそうですし、実は、当初は社長もサイトに大々的には登場しない方向だったんです。根はとても明るくてまっすぐな、かっこいい女性なんですけど、繊細な面もお持ちで、「社長がドンと目立つのは違うかなぁ」と。
であれば、登場の仕方を、誠実に編集する必要があるなと。社長のパーソナルな部分もしっかり聞き出して、結果、それが特設サイトにもなっているんですけど。最初から「出ます」という感じではなかったんです。
そうだったんですか。実は私が最初サイトを拝見していて印象的だったのが「作業着を着て正面を向いた田中社長の佇まい」だったんです。とてもかっこよくて、しかもそれが会社の魅力を引き出しているように感じて。モンブランさんの場合、クライアントがずっと持っていたもの。ずっと放っている光を捉えるから、理想と現実のギャップがあまりないわけですね。

モンブランのクリエイティブ② – 「現場に行って社長の話を聞いてない人に、絵作りはできない」
先ほど竹田さんがおっしゃっていましたが、モンブランさんは、ディレクターがコピーライターと一緒に動いていることが特徴的だと改めて感じます。
竹田:自分たちはこんな感じで十年以上やっているので普通なんですよ(笑)。モンブランの場合は「ディレクター」と「アートディレクター」ではなく、「ディレクター」と「コピーライター」。今回だったらコピーライター・プランナーの福永さんがアートディレクションも、写真のディレクションもする。東京と比べて規模も決して大きいわけではないので「自分たちでできることをする」形ですね。
福永さんは、コピーライターの範疇を超えて、アートディレクションまでやられているんですね。今回の提案でも、福永さんがトップページのFVまでイメージして起こされたということで、そこがすごく面白いですよね。それってみなさんからすると普通なんでしょうか?
福永:普通じゃないと思います(笑)。今回のケースでいえば、私と竹田さんが社長に一番近いところで誰よりも話を聞くんですね。初回のヒアリングで数時間、数日かけてお客さんに会いに行って、ご飯を食べたりいろんな話をするわけなんですが、そのバトンは他の人には渡せないですよね。「現場に行って社長の話を聞いていない人には、絵作りはできない」と思っているので。これは私の意地かもしれません(笑)。
近くでその人の話を聞いて、会社の課題をどんな表情で言っていたか、モンブランに何を期待しているか、を一番近くで見ている私たちだから「言葉を一番輝かせるビジュアルイメージ」が頭に浮かぶんです。
竹田:福永さんはもともと雑誌媒体出身の編集者です。だから言葉と絵はセットで、切り離して考えない。言葉を考えながらも先に絵が来たり、常に言葉と絵をセットで考えている人ですね。

モンブランさんとしては、竹田さんとライターさんのお2人がセットで動かれているということが多いのですか?
竹田:そうですね。モンブランのパートナーは、みなさんベースにあるのは言葉ですし、私も言葉を大事にしてもらってます。そして、言葉と絵はセットじゃないと結局お客さんに伝わらないし、いい言葉でもなかなか採用してもらえない。提案するときはピンタレストみたいな形で見せるのもいいんですけど、それだと表現も狭めてしまうし、寄せたくなってしまうので、なるべくそういうものを使わずに、言葉と絵のセットでオリジナルなものを提案しています。
まとめ – モンブランの根幹にあるのは「人を好きになること」
最後に、モンブランさんがクライアントワークで重要視されていることをお聞きできればと思います。事前アンケートでは「足を運ぶ」「違和感には蓋をしない」「好きになれるように好きなところを探す」「出発点は言葉から(言葉で絵を描く)」の4点、書いていただきました。
竹田:「足を運ぶ」は先ほどお話しした通りで、とにかく会いにいく。「違和感に蓋をしない」は開けてしまったものを正直に伝えてみる。そうすると、そこから信頼関係がぐっと深まることもあるし、流れが大きく変わったりすることもあるんです。
「好きなところを探す」は、相手に対して「この人のために作りたい」と思える状態になると、プロジェクトがとても楽しくなるんです。そのためには「好きになれるところ」を探すのが一番だなと。それが企画の種になることもあるし、次に進む力になります。なので、ヒアリングの時には常に「好きになれるところ」を探すようにしています。
「出発点は言葉から」に関しては、モンブランはプロジェクト進行においても「メンバーのらしさを生かした設計」をしているんですね。「モンブランのスタイルに合わせてもらう」ではなく「一緒にやっていきたいパートナーの特性に合わせて制作をする」。モンブランのパートナーにはライターやプランナーが多いから「出発点は言葉から」なんだと思います。
クライアントに対しては「好きなところを探す」。メンバーとは「その人ができること」で、一緒にものを作る。モンブランさんの根幹にあるのは「好きな人たちと仕事をする」そして「人を好きになること」なんですね。
竹田:そうかもしれません。でも、「人が好き」の前に、まず自分のことが好きなんです。今のような仕事のやり方になったのは「自分が幸せになるためにはどうあるべきか」を考えた結果なんです。人生において、仕事をしている時間は長いですよね。その時間を少しでも大切な時間にできるように、大切だと思える人たちを、自分から大切にしたい。そんな想いがあるんだと思います。


音更電設コーポレートサイト:制作クレジット
ディレクション:竹田京司(株式会社モンブラン)
企画・コピー・文章:福永あずさ
WEBデザイン:松原史典
サイト構築:松髙泰市
スチール撮影:穴見春樹
ロゴデザイン:杉村武則
