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デザインの先にある「生き方」を共有する仲間。マスターと受講生が辿り着いた場所|CREATIVE CLASS

iDIDメディア編集部
iDIDメディア編集部
2026.03.09

2025年9月に開講した野田さんがマスターを務める【「感覚」を「戦略」に変える、共創で磨く“超”提案力】が12月末に無事修了となりました。年を跨いだ1月下旬。オンラインでの濃密な3ヶ月間を経て、受講生たちは画面を飛び出し、野田さんが自ら手掛けた場所へと集まりました。

デザインを単なる「スキル」としてではなく、空間や人生を構築する「生き方」として捉え直したSPECIAL SESSIONのレポートを、店舗ツアーと懇親会の二部構成でお届けします。

マスターについて
  • 野田 一輝

    UNIEL ltd.

株式会社ユニエル代表、アートディレクター、デザイナー。
1987年 東京都生まれ、広告→エディトリアル→グラフィック→Webプロダクションを経て、2015年に株式会社ユニエルを設立、2018年よりAWWWARDS Jury メンバーとなる
デジタルデザインのみではなく、ブランド戦略・ブランドコミュニケーションを軸に、経営サポートからコンセプト立案、グラフィック、スペースなど、全体を通して、強い繋がりを作るディレクション・デザインを得意とする。
また、2025年には自らデザイン・施工を行なったSTAYFUL LIFE STOREがリニューアルオープンし、スペースデザイン、什器、販売する商品やパッケージのデザイン、飲食やイベントのプロデュースも行う。
デザイン面だけではなく、数字の面もフォローアップできるようなデザイナーとして活動中。

店舗ツアー:1.5年をかけた「圧倒的な自作」の迫力に触れる

武蔵野市の静かな一角にある「STAYFUL LIFE STORE」は、ライフスタイル雑貨・コーヒー・撮影スタジオ兼レンタルスペースを併設したお店です。一歩足を踏み入れた瞬間に空気が変わるようなこの場所は、元はスーパーマーケットだった建物を、野田さんとスタッフが1年半かけてフルリノベーションして作り上げました。

この空間の最大の特徴は、「既製品のなかから選ぶ、という選択肢を持たない」という徹底したDIY精神にあります。壁、カウンター、水回り、さらにはドアに至るまで、ほぼすべてがスタッフの手による自作です。外注したのは、専門技術が必要なエアコンとバスルームのみという徹底ぶりでした。特に驚かされたのは、防音性にこだわって作られたスタジオです。扉の下地から自分たちで作り込み、音が漏れやすいドア下部の隙間一つとっても、何度も試行錯誤を繰り返して対策を施したといいます。

このこだわりは、空間全体に漂う独特の「ヴィンテージ感」にも通じています。単に古いものを置くのではなく、イギリスのヴィンテージ家具を自分たちで手入れし、さらには新しい建具さえもその質感に馴染むまで作り込む。この「深掘りせずとも作れてしまう時代」にあえて手間をかける泥臭い執念こそが、野田さんがコースを通じて提唱してきた「曖昧な感覚を、説得力ある共通言語に変える」というスタイルの体現そのものでした。

御影石から抽出した「育ち続ける色彩」

壁の色一つとっても、妥協はありません。お気に入りの御影石からカラーピックし、特注ブレンドした3色のベージュだけで空間全体を構成しています。

さらに、この壁を毎年年末、スタッフ総出で塗り直しているというメンテナンス体制にも驚かされました。一度完成させて終わりではなく、使いながら自分たちの手でアップデートし、空間を育て続ける。そのDIYスピリットが、この場所に生命力を与えていました。

懇親会:デザインの先にある「生き方」の共創

夜も更け、お酒を片手に始まった懇親会。これまでの3ヶ月を振り返りながら、会話はより深い「生き方」の話へと進んでいきます。

「ありきたりな手法」に、閉じ込められていないか

「何も考えずに、いわゆるWEB制作でよく使われる表現をやってたら、野田さんに『これやらないほうが良いですよ』って言われて…」ある受講生が、苦笑いしながらコースを振り返ります。

「それが自分のオリジナルであればいいと思うんですよ。100個の選択肢の1つならいいんですけど、それしか知らないともったいないなと思って。」(野田さん)
「提案書もいつもの感じで情報を並べてるだけだなーというのはコース中に実感しましたね。」別の受講生も続けます。同じ伝え方だと響かないクライアントもいる。クライアントに応じて伝え方も変えていかないといけないと改めて感じたと話します。

掘れば掘るほど面白い。細部までこだわったクライアント設定

今回のコースの最終アウトプットは、架空クライアントのリブランディング提案。通常、デザイン課題で最初に共有される情報といえばオリエン資料が一般的ですが、野田さんが用意したのは、リアルなヒアリングまで想定された膨大なクライアント資料。その企業の成り立ち、大切にしている価値観、社員インタビュー、さらには「なぜこの事業を始めたのか」という背景にある原体験に至るまで。

「実はあちこちに伏線を張っていて。あのクライアント」と、課題の裏話を始める野田さん。「掘れば掘るほど、新しい情報がトラップのように次々と出てくる」と受講生が舌を巻くほど、その設定は一企業としてそこに実在しているかのように作り込まれていました。

「依頼内容としてはどこまでやって欲しいかは明言してないけど、資料の中ではクライアントが困っているところをさらっと伝えたり。誰がここを拾ってくれるのかなーと楽しみにしてました」と、少年のような表情で明かす野田さん。その種明かしを聞いた受講生たちからは、「めちゃくちゃ試されてたんだな……!」と、驚きの声が上がりました。

「コンポーネント化」という名の、無意識の制約

コース期間中の鋭いフィードバックも改めて話題に上がりました。 ある受講生のデザインに対し、野田さんが放った「これ、コンポーネント化してませんか?」という問い。これは単なる技術的な指摘ではなく、コンポーネント化が早すぎると既存の型やフレームに囚われてしまい、抜け出せなくなってしまうというメッセージでした。

「まずはフリーハンドで、雑念に捉われず納得がいくまで描き切る。情報設計や整理といった『整える作業』は、そのあとでやればいい。」(野田さん)

理屈や効率に逃げる前に、身体的な感覚を研ぎ澄ませ、納得いくまで自分の手を動かし続ける。その執念の根底にあるのは、野田さんが大切にしているものづくりの基本でした。

「美しいものをおけば美しくなるのはあたりまえで。そんな場所やモノが溢れている時代だから、自分で試行錯誤した部分が見えてこそ、ようやく個の美しさが際立つと思っているんです」

彼らがコースを通じて得たのは、単なるトレンドの追い方や、効率的な制作手法ではありません。世の中に溢れる「正解らしきもの」をなぞるのではなく、たとえ不器用でも、自分の内側から湧き出る「意志」をどうデザインに乗せるか。納得のいく質感が出るまで壁を塗り込み、建具を自作したあの店舗リノベーションのDIY精神と、たしかに一本の線で繋がっていました。

「マイナス」から道を切り拓いてきた、野田さんの原点

野田さんがなぜこれほどまでに「自作」にこだわり、圧倒的な熱量で物事に向き合うのか。その原点は、彼の決して平坦ではなかった歩みにありました。

何も無い、あるいはマイナスと言えるような過酷な環境を生き抜き、自らの腕一本で居場所を勝ち取ってきた経験。そんな彼が語るデザイン論は、単なるスキルの話ではありません。 「泥臭い現実をどうサバイブし、自分の人生をどうデザインするか」。その野生的なまでの創造性に触れ、受講生たちの視座もまた、大きく引き上げられていきました。

失敗さえ笑い飛ばせる、一生モノの「ダチ」との出会い

このコースを通じて得られた最大の財産は、デザインの知識以上に、何でもさらけ出せる「仲間の絆」かもしれません。

この日の雑談でも、普通なら隠したくなるような仕事での壮絶なトラブルや、思わず絶句するような現場での失敗談まで、皆で笑い飛ばしながら共有しました。野田さんがまず自分の弱さや過去を包み隠さず見せてくれるからこそ、受講生たちもまた「カッコ悪い自分」をさらけ出して、一人の人間として向き合うことができたのです。スクールが終わっても、一緒に展示を見に行ったり、新しい挑戦を支え合ったり。そんな多層的な関係が続くのは、ここが単なる学びの場ではなく、野田さんが受講生との関係性を「ダチ」と表現するように、本音で繋がれる場だったからだと思います。

むすびに:自分をさらけ出し、共に育っていく

リノベーションした店舗がそうであるように、ここから続く彼らの関係もまた、手間暇をかけて育てていくものです。

初めて顔を合わせお酒を酌み交わしたひととき。そこで共有されたのは、デザインの技術以上に、自らの人生を主体的に構築していくためのヒントだったのかもしれません。

既製品の人生を選ぶのではなく、自分で考え、手を動かし、仲間と共に塗り替えていく。彼らがこの先、どんな景色を共有していくのか。その未来が、今から楽しみで仕方がありません。

Credits

Text:Noriko Sato

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