目次
1. Farmgroup

2005年にバンコクで創業。グラフィックデザインのスタジオとして始まり、現在はブランディング、タイポグラフィ、モーション、空間デザインまで、領域は多岐にわたります。商業案件と並行してプロボノや自主企画のアートイベントにも積極的に取り組み、Farmgroupはバンコクのデザインコミュニティにとってなくてはならない存在です。なお、今月開催の「SYNC」にはFarmgroupのシニアデザイナー、Sumpatha Jadeeさんも登壇予定。現地でその仕事の背景を聞けるのが楽しみです。
実績紹介:Bangkok Metropolitan Administration|The City of Bangkok

バンコク都市圏行政機構(BMA)から依頼を受けた、バンコク市のアイデンティティシステム。1923年に「シャムの工芸王」と称された王子が手描きした紋章を起点に、カスタム書体の開発からカラーパレットの刷新まで、都市のビジュアルアイデンティティを再構築しました。
2. Studio 150

プラハとアイントホーフェン、それぞれヨーロッパで学んだ2人がバンコクに戻り、2017年に立ち上げたグラフィックデザインスタジオ。2019年には共同創設者のPiyakorn ChaiverapundechとPat Laddaphanの2人そろってAGI(国際グラフィック連盟)のメンバーに選出されています。
タイポグラフィを軸にしたアイデンティティ設計とデザインリサーチが得意で、Bangkok CityCity Galleryとともに「Bangkok Art Book Fair」を共同設立するなど、コミュニティへの関わりも深いスタジオです。「グラフィックデザインは強力なコミュニケーションツール。でも特定の媒体に縛られたくはない」という2人の言葉が、印象的です。
実績紹介:Bangkok Art Book Fair|Visual Identity


毎年バンコクで開催されるアートブックフェアのビジュアルアイデンティティ。年ごとにテーマとコンセプトを変えながら、タイポグラフィとグラフィックシステムを一から設計する継続的なプロジェクトです。スタジオ自身が共同設立した場でもあり、作り手がコミュニティごとデザインするという姿勢が伝わってきます。
3. TNOP Design

シカゴの有名デザインスタジオSegura Inc.で8年のキャリアを積んだTeeranop(Tnop)Wangsillapakunが、2005年にシカゴで立ち上げたグラフィックデザインスタジオ。現在はバンコクを拠点に活動しており、Studio 150の2人と同じく、AGI(国際グラフィック連盟)のメンバーでもあります。
グローバルブランドからバンコクのローカルビジネスまで、クライアントの幅は広く、「デザインとはコンセプトとクラフトマンシップの絶妙なバランスである」という言葉を体現するような仕事が並びます。シカゴで腕を磨き、バンコクへ。そのグローバルな視点が、クライアントの幅にも表れています。
実績紹介:Bangkok Design Week|Logo & Identity

毎年開催されるバンコク最大のデザインイベント、Bangkok Design Weekのロゴとアイデンティティ。都市とデザインの関係を問い直すイベントにふさわしい、シャープで文脈のあるビジュアルシステムです。
4. Prompt Design

バンコク拠点のブランディング&パッケージングデザインスタジオ。創設者のSomchana Kangwarnjit(通称Champ)は、Pentawards、iF Design Award、Red Dot、Core77など70冠以上を獲得しており、その実績からPentawardsをはじめ複数の国際コンペティションで審査員も務めています。
グラフィックやブランディングが中心のスタジオが多い中で、パッケージングという領域でここまでの受賞歴を持つスタジオはタイでも珍しい存在です。タイを訪れた際に、もしかしたらどこかのスーパーやカフェで知らずにPrompt Designの仕事に触れていたかもしれません。
実績紹介:RAIMAIJON|Branding & Packaging Design

タイのサトウキビジュースブランド「RAIMAIJON」のブランディングとパッケージデザイン。Pentawards、iF Design Award、Good Design Award(日本)、Core77 Design Awardなど、異なる国・異なる視点の賞を同時に受賞した作品で、Prompt Designの代表作のひとつです。
5. BHBH Studio

本名Thanawat Sakdawisarak、通称「Bloody Hell Big Head」ことBHBHは、バンコク拠点のイラストレーター/グラフィックデザイナーです。幾何学的な形態を組み合わせ、シュールでカラフルなシーンをつくり出すスタイルが特徴で、海外の雑誌等に複数回掲載されるなど、国際的な注目を集めてきました。
個人の表現を精力的に発表し続けていて、スタジオというよりは一人の作家としての側面が強く、このリストの中ではちょっと異色の存在。それでも外せないと思ったのは、バンコクのクリエイティブシーンの「個人の力」を象徴するような存在だからです。
実績紹介:Nike Thailand|T(ha)iny Little Things

「身の回りの小さなもの」をテーマにしたNike Thailandとのコラボコレクション。タイの街で見かける日用品やユニークなグッズからインスピレーションを受け、幾何学的な形態とタイ文字、ローカルなスポーツ・文化のモチーフを組み合わせたビジュアルに仕上げています。バンコクのサイアムセンター内Nike BKKで限定展開されました。
6. KÜOZ

スペイン・バルセロナ出身のMarc Fernándezとフランス出身のNicolas Vayssièresによって、2013年に設立されたクリエイティブスタジオ。バンコクとフランス領レユニオン島を拠点に、グラフィックデザインやブランディング、イラストレーション、アニメーションまで幅広く手がけています。
Nicolasは国連や世界銀行、MTVなどの国際プロジェクトに携わってきたほか、バンコクのアーバンアートイベント「BUKRUK Festival」の共同創設者としても知られています。現在はバルセロナの老舗ブランディングスタジオ「NOMON」とパートナーシップを組んで東南アジア拠点で活動するなど、ヨーロッパと東南アジア、双方の視点が行き交うような仕事ぶりが印象的です。
実績紹介:Miquelrius|NOBO Board Games

スペインの文具ブランドMiquelriusとのチームワークによって生まれたボードゲームシリーズ。子どもから大人まで楽しめるゲームをコンセプトに、パッケージからビジュアルシステムまで一貫してデザインしています。クリエイティブの理念:「thoughtful and simple design(思慮深く、シンプルなデザイン)」をまさに体現するような、遊び心と設計の思想が感じられます。
7. Practical Design Studio

デザインだけでなく、コミュニティづくりにも力を入れるグラフィックデザインスタジオ。ThaiGA(タイグラフィックデザイナー協会)やタイ文化省とともに「I am a Thai Graphic Designer」を企画し、1,000点を超える作品を集めた大規模な展覧会も実現しました。
2011年にはグラフィックデザインフォーラム「Somewhere Thai」も主催。デザイナー同士が学び、交流する場づくりにも取り組んできました。タイのデザインシーンにおいて、デザインコミュニティそのものを育ててきたスタジオといえそうです。
https://practicalstudio.wordpress.com
実績紹介:Bangkok Art and Culture Centre(BACC)|Visual Identity

バンコクを代表する文化施設、Bangkok Art and Culture Centre(BACC)のビジュアルアイデンティティ。アートやデザイン、市民活動が交差する施設の特徴を反映しながら、ロゴやビジュアルシステムを設計しています。文化やコミュニティづくりへの視点がうかがえるプロジェクトですね。
8. be>our>friend

ブランドと空間を横断するデザインスタジオ。2005年の創業以来、ブランド戦略やビジュアルアイデンティティ、グラフィックシステム、空間デザインまで幅広く手がけています。自らを“トランスディシプリナリー・スタジオ”と称し、領域を横断したプロジェクトにも積極的に取り組んでいます。
近年は、バンコク最大級の複合開発「ONE Bangkok」や、タイ最大規模のコンベンションセンターQSNCCのリブランディングを担当。ロゴやグラフィックだけでなく、街の風景や施設の使われ方などを含む、都市開発のスケールでブランド体験を設計する姿勢が印象的です。
実績紹介:The Ritz-Carlton Bangkok|Brand Experience Design

ザ・リッツ・カールトン・バンコクのブランド体験設計プロジェクト。ホテルの世界観を軸に、ビジュアルアイデンティティや館内グラフィックなどを一貫してデザインしています。ラグジュアリーホテルならではの世界観が、細部まで丁寧に落とし込まれています。
9. Round and Nine

バンコクを拠点とするデザインスタジオ。クライアントにはタイの大手通信会社や家具メーカーなどをもち、ビジュアルアイデンティティやパッケージデザイン、インタラクティブデザインを中心に活動しています。
スタジオ名の「Round」と「Nine」は、それぞれタイ語で「私」と「あなた」を意味する言葉に由来しているそう。その名の通り、クライアントと一緒にデザインの解決策を探っていく姿勢を大切にしています。スタジオ名そのものが、このスタジオの考え方を物語っているようですね。
実績紹介:Packaging DIY Kids

タイの小学生向けに企画された、パッケージデザインを学ぶためのワークショップ。ロゴやバーコード、栄養成分表示など、身近なパッケージの要素をステッカーを使いながら学べる内容になっています。パッケージを「つくるもの」から「考えるもの」へ変えてくれる、Round and Nineらしいプロジェクトです。
10. Norman Design Studio

バンコクを拠点にする、ブランドの立ち上げや再構築を得意とするグラフィックデザインスタジオ。ブランド戦略からアイデンティティ、パッケージデザイン、エディトリアルデザインまで幅広く手がけています。
特徴的なのはプロジェクトの進め方。「Smart & Small」という考え方で、大きな組織をつくるのではなく、プロジェクトごとに最適なチームを編成しながら制作を進めています。この柔軟さも、ブランドとじっくり向き合うための工夫のひとつなのかもしれません。
https://www.normanstudio.in.th
実績紹介:Prowthai|Virgin Coconut Oil

タイ産バージンココナッツオイルブランドのパッケージデザイン。商品の自然な魅力を伝えながら、店頭でも印象に残るビジュアルへと仕上げています。2021年にはA’ Design Award(イタリア)のSilver Awardも受賞。Norman Design Studioを代表する仕事のひとつです。
11. Sand Studio & Co.

UX/UIとサービスデザインに特化したデザインスタジオ。2019年に、ロンドンで7年以上のキャリアを積んだSandee Usanachittによって設立されました。ロンドンで経験を重ねた後、バンコクへ戻ってスタジオを立ち上げたという経歴も印象的です。
これまでに100件以上のプロジェクトを手がけ、BMW Financial Servicesやttb(TMBThanachart Bank)、バンコク都市圏行政機構(BMA)など幅広いクライアントを支援。2023年にはClutchの「Top User Experience Company Thailand」にも選出されました。UXに専門性があり、ひときわ体験設計に軸足を置いた存在です。
実績紹介:BMW Financial Services|Digital Experience Design

日本人にも馴染みのあるBMW Financial Servicesのデジタル体験設計プロジェクト。ユーザー調査からUI設計までを一貫して手がけ、サービスの使いやすさ向上に取り組んでいます。「どう見えるか」だけでなく、「どう使われるか」に向き合うSand Studio & Co.らしい事例です。
12. Special Normal

バンコクを拠点にするデジタルデザインスタジオ。ブランドアイデンティティの構築からWebサイトのデザイン・開発まで、ブランドとデジタルプラットフォームを一体で設計しています。
近年はReactやNext.jsなどの技術を活用しながら、企業やブランドのデジタル体験を構築。デザインとテクノロジーの両方を扱えることが強みです。グラフィックデザインからデジタルプロダクトへと広がる、現在のタイのクリエイティブシーンを象徴するような存在です。
実績紹介:EM Motor|Nextsite

電動モーター関連企業EM Motorのコーポレートサイトリニューアルプロジェクト。ブランドの世界観と技術力を伝えるため、デザインと開発を一体で進行しています。ブランドアイデンティティとデジタルプラットフォームを横断して設計する、Special Normalのアプローチがよく表れていますね。
おわりに
以上、タイのクリエイティブスタジオ12選でした!いかがでしたか?
今回特に印象的だったのは、ヨーロッパやアメリカで学んでバンコクに戻ってきた人、海外から移り住んできた人など、国境を越えた背景を持つ作り手の多さでした。そうした外の視点と、タイ文字やローカルなモチーフが混ざり合うところに、タイならではの表現が生まれているのかもしれません。
今月はいよいよSYNCのため、私たちも現地バンコクへ。今回ご紹介したスタジオの仕事に街で出会えるかもしれないと思うと、今からわくわくしています。その様子も、また別の記事でお届けできればと思っています。
それでは、次回の「アジアのデザインを探る」でお会いしましょう!
