1. BRUTUS

紙とデジタルの橋渡しを見事に実現しているのが、BRUTUSのサイトです。トップページでは注目コンテンツがスライド形式で次々と紹介され、その多くがオリジナルムービーになっています。最新刊の特集から過去の特集、MOOK関連まで、動画コンテンツに力を入れていることが伝わってきます。
動画ならではの切り口で雑誌を補完するだけでなく、Web独自のコンテンツも積極的に制作。ショート動画も展開し、スマホ世代にも親和性の高い設計になっています。「SPECIAL」では本誌と連動した特設サイトやWeb限定コンテンツも展開。
質の高いビジュアルと、雑誌らしさを感じる見やすいレイアウトで、Webならではの気軽さでBRUTUSを楽しめるサイトです。
2. リンネル

BRUTUSと同じく、スマホでの閲覧を意識した設計になっているリンネル。訪れるたびに季節の花々が彩りを添える「花ごよみ」エリアが印象的で、週ごとに模様替えされるこのスペースが、サイト全体にやわらかい空気感を生んでいます。
詳細ページでは本文と商品情報が連動。気になった商品にスムーズにアクセスでき、本文の最後には関連商品や小さなコラムが添えられ、本誌のような読み応えと発見のある体験ができます。
手描き風のアイコンがサイトのトーンにぴったりで、文字が軽やかに揺れるような細やかな動きが随所にあり、穏やかで心地よい雰囲気を後押ししています。
Production: SHIFTBRAIN Inc.
Account Manager: Kazuya Okada
Producer: Iku Ando
Art Director: Masashi Fujiyoshi, Hiroki Miyamoto
Designer: Kentaro Oda
Project Manager: Saki Tsuboi
Director: Saori Minato
Developer: Tomoya Takahashi (Orunica Inc.)
3. CLUÉL

リンネルがスマホを意識した設計なら、CLUÉLはさらにスマホに振り切っています。ファッションを「憧れ」ではなく日常の延長として楽しむCLUÉL。Webサイトは淡いピンクを基調に、スマートフォンサイズの縦長ビジュアルでSNSの感覚そのままの構成になっています。
ここのサイトの醍醐味は、EC機能が組み込まれていて、記事を読むだけでなく実際にものを買えること!価格やブランド名を大胆にレイアウトしたビジュアルに、手書き風のあしらいや軽やかなコピーを添えて、買い物を楽しむ気分を演出しています。
情報というより雰囲気で選べる作りで、読むことと買うことが自然につながるサイトです。
4.広告

ここまでとは打って変わって、異彩を放っているのが雑誌「広告」のサイトです。ネオングリーンやピンク、紫といった強烈な色使い、画面を占拠する巨大な図形、重なり合うテキスト。読みやすさや快適さは意図的に排除され、見る側を立ち止まらせる攻撃的なデザインになっています。
過激なビジュアルとは対照的に、扱われるテーマは労働、制度、資本、公共性といったシリアスなもの。批評性が高く、強烈なデザインと硬質な内容のギャップが印象的です。
他の雑誌サイトが読みやすさを追求する中、あえて快適さを拒否する姿勢。広告という表現手法そのものを体現したような、強度の高いサイトです。
Production: kome inc.
Producer / Planner: Yusuke Yamanaka (kome inc.)
Project Manager: Shun Shinohara (kome inc.)
Art Director / Designer: Hidetoshi Hara (Sunny Inc. / Nauts)
Front-end Developer: Ryo Ikeda (devdev Inc. / Nauts)
5. PLUG MAGAZINE

広告ほど過激ではないものの、こちらも型にはまらない雑誌がPLUG MAGAZINE。岡山発の雑誌でありながら、地方誌と全国誌を混在させたバランスを打ち出しています。Webサイトは最小限の機能に絞り込んだダイナミックなレイアウトです。
「地方装生」シリーズでは、倉敷、瀬戸大橋周辺、岡山といった各地の駅や街を舞台にしたコンテンツが展開されています。
編集長は「雑誌は”雑”で良い」と語り、岡山と東京、地方企業と世界的ブランドが入り混じったアナーキーな構成を選択。Webでも、その編集方針が貫かれたサイトです。
Credit: 有限会社サーブ
6. TRANSIT

同じく土地に注目する雑誌として、旅をテーマにしたTRANSIT。観光情報を網羅するのではなく、その土地の文化や暮らしを深く掘り下げてきた雑誌です。Webサイトでもその姿勢は一貫していて、大きなビジュアルと余白を活かしたレイアウトから、誌面のリズムがそのまま感じられます。
TOPページでは、右側に本の背表紙のように記事がまとまっていて、読む時間も表示されています。本棚から本を選ぶような感覚で、興味のある記事を探せる仕組みです。
「WHERE TO GO」「WHAT TO DO」といった導線を軸に、国や地域、テーマを巡りながら記事を辿れます。検索よりも回遊を重視し、写真や記事を辿りながら旅の断片に出会っていく。効率よく情報を集めるというより、その土地の空気を感じながら巡っていくような作りになっています。
art director 蛯名亮太(eieio)
designer 有江博之 (Supplement)
frontend engineer 福永祐介
backend engineer 松原文明(水中工房)
director 板倉隆一 園 卓也
7. TARZAN

運動・健康・身体をテーマにしながらも、「正しさ」や「ストイックさ」を前面に出しすぎないTarzan。Webサイトのカテゴリーは「鍛える」「走る」だけでなく「遊ぶ」「食べる」「身につける」まであり、トレーニングを超えた生活全体をカバーしています。
「at」では時間と場所を軸にしたスナップで運動のシーンを切り取るなど、Tarzanらしい視点でコンテンツが展開されています。身体を動かすことを義務ではなく楽しみの延長として捉え、明確に区切られた構成で目的がある人も、ふらっと見る人も回遊しやすいです。
8. anan

Tarzanが身体を軸にするなら、ananは心や感情を軸にした雑誌です。1970年の創刊以来、恋愛、性、心理、占い、健康、エンタメと、感情や生き方に踏み込む特集を打ち出してきました。Webサイトは雑誌の補完を超えて、Web独自のメディアとしての完成度があります。
ランキングは日毎、週ごと、月ごとに切り替えられ、Weekly Keywordで今の関心事を素早くキャッチ。占い、暦といった毎日訪れたくなる理由が用意され、時事的なコンテンツが充実しています。
ページ下部には公式キャラクターのパンダが常にいて、スクロールするとでんぐり返しをしたり、時にはサイトを横断したり。いいアクセントになっています。
9. POPEYE

最後に紹介するのは、「架空の街」をコンセプトにしたPOPEYEのWebサイト。どのページを見ても右側に「本日の予定はこちら!」が固定表示され、展覧会、テレビ番組、映画、イベントなどが並んでいます。街を歩いていて偶然貼り紙やフリーペーパーに出会う感覚で、一覧性はあるけれど整理されすぎていない、そんな心地よい雑然さがあります。
レイアウトも特徴的で、角丸・円形・変形フレームが混在し、写真のトーンも均一ではありません。まるで雑誌のページをバラバラに机に広げたような見せ方です。
コンテンツはテキストとポッドキャストが中心。週1の寄稿コラム「TOWN TALK」は月〜日曜日で担当が変わり、それぞれの視点で書かれています。連載やポッドキャストも豊富で、雑誌とは別の方向性で展開されています。スタッフの顔が見えるページもあり、親近感が感じられるサイトです。
おわりに
9つのサイトを見てきましたが、それぞれのアプローチはやはり違っていました。
ある雑誌は動画や音声に力を入れ、ある雑誌はコンセプトで世界観を作り込み、またある雑誌は商品との距離を近づける。紙で培ってきた編集の強度を保ちながら、Webならではの即時性や回遊性を活かしている。雑誌のWebサイトは、紙の延長ではなく、もう一つの接点として存在しているんだなと感じました。
今回は9つでしたが、雑誌サイトはまだまだたくさんあるので、第2弾も…?
ご期待ください!!
