目次
1. WRITING & DESIGN Inc.

すごいサイトですね。これが映像ではなくすべてWebGLでの制作というところに途方のなさを感じるわけですが、また驚かされたのが「隠しセルフィーモード」です。このモードをオン(=インカメラをオン)にすると、窓から差し込む光の中に、自分のシルエットがうつるんです。手をふってみると、まるで「どこかにいるもうひとりの自分が、見ている自分に手をふっている」ような感覚に陥ります。
映画のワンシーンのようでありながら、「自分自身もまた、映画のように愛おしい世界に生きている」という感覚。そんな自分をあなたはどう感じるか、と問われているようでもあり、妙に懐かしさを感じる、まさに心が動かされる「体験」。インタラクティブ性と会社の哲学がふわりと重なっており、WRITING & DESIGNさんが何を大切にしているのかが伝わってくるサイトでした。
Client WRITING & DESIGN WRITING & DESIGN PARTNERS
Creative Direction, Art Direction, Design イム ジョンホ(mount inc.)@junim Planning, Art Direction, Technical Direction, Development 岡部 健二(mount inc.)@kenjiokabe
Design タイ トウオン(mount inc.)@tai_t_
Produce 吉田 耕(mount inc.)
Project Management 仲橋 祥子(mount inc.)
Copy Writing 高崎 卓馬(WRITING & DESIGN)@takumantakuman
Translation リリア・シルバ(LATINA FORTIS)
Music 青柳 拓次(Little Creatures)
2. 株式会社Neu – 広告に、こだわりと偏愛を。

言葉とオブジェが合体したようなKVが面白い。このオブジェも、愛、執念、など、Neuにまつわるキーワードが表示されるマウスストーカーも、他ページからTOPに戻った際の言葉の羅列からも、過剰なほどに伝えたいこと(こだわりと偏愛)があることがわかります。
このこだわりと偏愛さがいたるところのギミックとしても表現されていて、チーム動画の見せ方、所々に出没するドット文字ななめに傾くコンバージョンあたりも楽しい。そしてこのサイトの注目すべきところは、コーディング経験のないクリエイターがノーコード制作ツールFremerですべて制作しているところ。制作を担当した堀野絢平さんの制作背景ポストも必読ですよ。
Client Neu Inc.
Creative Direction / Planning / Art Direction OHTA Yoshitaka(FunTech inc.)@yoshi15_funtech
Design / Framer Development HORINO Junpei(FunTech inc.) @jdesign06
Technical Direction HASHIMOTO Takuma(FunTech inc.) @tkm_hmng8
Built with Framer @framer
3. 採用情報 _ LayerX

この採用サイトが特徴的なのは、「あなたのための採用ページ」を制作してくれるところ。折り紙のようなオブジェクトが変化のプロセスを示しているのも面白いのですが、このオブジェクト、パーソナライズした瞬間に動きを止めるんです(=ジェネレート)。「かたちに完成というものはなく常に現在進行形」であることが伝わってきます。
採用サイトの場合、求職者の「現在の状態」によって見たい情報も違うし、能動的と受動的の合間でサイトを見ていることもあると思うのですが、その点このサイトはある種受動性に身を委ねるようなところがありますね。行動指針には「迷ったときこそAIの進化を信じ、 AIに賭ける選択をしよう。」とあり、この「カスタマイズされた情報」を試してみる精神=この会社の行動指針を体験することにつながっているのもまた面白いです。
CREDIT WEB DIRECTION : Ryo Yamahira (IN FOCUS)
WEB DESIGN : Tetsuro Shimura @tetsuroshimura
PROGRAMMING : Junya Ohara (IN FOCUS) @jun00break
PRODUCE : Kento Inada (IN FOCUS)
MOVIE DIRECTION : Tetsuro Shimura
CINEMATOGRAPHY : Masaki Ogawa
BOX DESIGN : Maho Motoyama
OFFLINE EDIT : Takuma Miyamoto
CLIENT : LayerX
4. Alche, Inc

久しぶりにゴリゴリなサイトを見た気がします。なんといってもMVの中心に鎮座するロゴマークが強烈。ロゴの座標や質感を調整できるようになっているて、企業の自由さとエンタメさが現れていますね。
「これまでにない没入型・体験型のエンターテインメントを生み出す」ということで、確かに没頭するほどの世界観が構築されています。VISIONのパートではロゴの中の世界へ没入。ロゴマーク=ALCHEの作り出す世界観という表現になっていて、まさに体験型のサイトですね。WebGL総本山さんの紹介記事もぜひ。
制作:JUNNI @junni_jp
5. 心拍 (Shinpaku)

MVで画面に収まらない縦長の写真を使うことで、スクロール体験によって農地のダイナミズム。風が吹いてくるような気持ちよさです。そこからのボディコピー、言葉と写真、縦書きと横書き、空間の間のひとつひとつが心地いいリズムを生み出しています。そう考えると「心拍」もリズムですよね。
日本語を縦書きにすることで短歌的なリズムが生まれ、それが縦スクロールによって軽やかに歌い出すような錯覚さえ覚えます。
そこにはスクロールというユーザー側の行為とデザインが作り出す相互のリズム感があって、それが新鮮に響きます。フッターだけが実は動画という、静かな余韻を残してくれるところも美しい。静かなる美しさへの探究を感じさせるサイトでした。
Client:株式会社マガザン 心拍様
Direction, Writing, Translation:重松 佑(Shhh Inc.)
Art Direction, Design:宇都宮 勝晃(Shhh Inc.)
Logo Design, Illustration: 岸本 敬子 (Magasinn, inc.)
Copywriting:深澤 冠
Photography: 河野 涼(hyogen)、市橋 織江、市橋正太郎、河田弘樹、山地憲太(shinseki) 、岩崎達也
Model: 八木みなみ
Development:坂田 一馬 (Good rings)
6. 50th Anniversary|株式会社シップス

すべてが刺繍で構成されたサイトです。まず画面が「布地」になっていて、それまで見ていた「モニター画面」からのマテリアル感の変化がドラスティック。ここで少し気持ちのスイッチが変わるというか。そして、布地を走る刺繍のリアルな描写がすごい。バツボタンも洋服のボタンになっているところもユニーク。
このサイトのすごいのは、その刺繍的ギミックにのせて、スタッフさんのイラストレーション、グッとくるコピーが小気味よく展開していくところで、この全体のデザインと刺繍的ギミックが相互にうまく作用している。SHIPSの”原点に戻る感”が出ていてブランドへも共感できる。クラフトマンシップとSHIPSをかけているのがもうまいですよね。
制作:STAND FOUNDATION co.,ltd.
イラストレーション:植松しんこ
7. Alceo

こちらのサイト、サイトのKVが”モアレ”のアニメーションなんです。明確な”かたち”ではなく、動きつづける視覚模様といった、非固定的なものをKVに持ってきているところが斬新。Stop/Playボタンがついており、StopするタイミングによってKVも変わるわけですね。この不明確・不明瞭さをひとつのアイデンティティに据えているところが面白いです。近年、可変のロゴも少しずつ増えてきたり、アイデンティティにおける可変性、”動く”という部分が現れてきているのが面白いですよね。デザインもシンプルであり明瞭。
Client: Simplex Inc.
Producer: Kazuya Okada
Assistant Producer: Kazuyo Miyagawa
Director, Project Manager: Tetsuya Kobayashi (BACON inc.)
Copy Writer: Seiya Munakata(White Note Inc.)
Art Director, Designer: Ryohey Kamada
Technical Director: Yoki Sakamoto(ARUTEGA Inc.)
Front-end Developer: Wataru Kojima
Photographer: Fuminari Yoshitsugu
8. Time Tone for Expo 2025 Osaka evala+ItsukiDoi

初見では混乱してしまうような画面設計が意図してなされている。スクロールすると出てくるのは、イベントで手渡される古い資料みたいなワープロ文字。完全にデザインというよりは、資料という風情ですね。これがインパクトのあるMVとともに紹介されることで、また一味違う、不思議な新鮮さをもたらしています。新しさだけを追求するのではなく、一種の古さの”手触り”も飲み込んだデザインであり、その成立のさせ方が秀逸だと感じたサイトです。
9. はてなブックマーク20周年

はてなブックマークが20周年ということで、過去人気だった「はてなブックマーク」を20年分振り返るコンテンツがリリース。20年分の人気記事だけではなく、20年で「あとで読む」などの”タグ”が多くついた記事もランキング化。
このサイトを見て感じたのは「”コンテンツ”を持っているとやっぱりすごいな」ということと、その膨大なるコンテンツをどう分類するか、という「キュレーション性」が面白さの明暗を分けるということです。とにかく、ビジネス的文書とかではなく、無軌道に面白い記事がたくさん並んでいます。時間あるときに楽しんでみたい、実は意外と息の長そうなサイト。
10. PARCO 2025 AW

画面は固定でムービーが流れ、クリックしていく度に、画面に重なるように写真や動画が重ねられていく(画面上部が写真一覧になっている)。そしてメニューボタンの中に、なんとコンセプト文、ムービー、ディレクターのメッセージやプロフィール、クレジットなどの各種コンテンツが格納されていて、一番見せたいもの以外はすべて除外している。
また、制作のeieioさんによると「背景に広がるビジュアルには、キービジュアルの撮影地である東京都・大島の気象データをもとにした、気候連動の演出を静かに重ねています。 雨量に応じて現れる白い粒は記憶のしずくのように、風速に呼応する線は風の通り道のように現れ消えます。」(Instagramから引用)とのことで、気象データでサイトの姿が静かに変化するところが面白いです。
<China Crew>
Creative Director: Aj Duan
Director: Aj Duan
Director of Photography: Bowie
1st AC: Fang Xiaohe sdodo studio
2nd AC: Cai Mengjie sdodo studio
Camera Assistant: Zhang Juntao MD vision
Equipment: sdodo studio & MD vision
Editor: Teng
Color Grading: Shi Wenlong, Sharon WASH
Sound Design: IXYXI studio, Teng
Photographer: Effy Yu
1st AC (Photo): Yang Hao
Producer (Shanghai): Tiantian
Special Thanks: Tinseoi
Voice Over (Male): Henry Jen
<Japan Crew>
Creative Director: Shinichi Yamashita (kokoroni)
Design: kokoroni
Producer: Masaru Kaku (kirameki)
Production Manager: Nao Inoue
Model: MUOY
Model: CHIYO
Casting: GOLD CAST
Stylist: Shotaro Yamaguchi
Hair & Make-up: Namiko Takemiya
Lighting Director: Jialin Ren
Drone Operator: Keiichi Kitamura
Postproduction: Omnibus Japan
Editor: Hiroshi Matsuda
MA Mixer: Teppei Ohni
DPE: IMAGICA
Web Design: Ryota Ebina (eieio)
Web Development: Yusuke Fukunaga
おわりです!
2025年8月のまとめサイト、いかがでしたでしょうか。今回も楽しかったですね。
今回のサイトの中でいくつかピックアップしてみますと、
・「WRITING & DESIGN Inc.」の自分自身を映画のワンシーンのような世界に登場させるという、インタラクティブ性と会社の哲学と重ね合わせる試み。
・コーディング経験のないクリエイターがFremerですべて制作していた「Neu」。
・「カスタマイズされた情報」を試してみる精神=この会社の行動指針を追体験させた「LayerX」。
・「心拍」のユーザーのスクロール行為とデザインが作り出す相互のリズム。
・「Alceo」の動きつづける視覚模様というアイデンティティ。
あたりが印象に残りました。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!
また、来月お目にかかりましょう。良い夏の終わりを。
iDIDメディア編集部でした!