目次
1. LQVE

「問いから愛を生み出そう。」というコピーが印象的なLQVEのコーポレートサイト。「問い(知性)」と「愛(情熱)」を対比するかのように、モノトーンの静けさの中を自由に駆け巡るビビッドな赤が印象的。
何よりも、このサイトの根幹を成しているのが「LQVE社歌」などの音楽に合わせてフッターから登場する音声波形。まるでサイト全体が音楽プレイヤーになったような趣です。
そう考えるとABOUTに現れる赤のモーションもすべて音楽的意匠になっていて、「音楽プレイヤー」と「ウェブサイト」が分かちがたく結びついた、DJミックス的感覚を体験できるサイトですね。
実は並行してLQVEのサイトを制作した中野さんにインタビューをさせていただいたのですが、LQVEの飛躍的かつ非合理的性質をサイトに落とし込むことに苦労されたそうで、「最後はある意味”音楽”を作っているつもりで作った」のだとか。この中野さんのインタビューも近々iDID Magazineでアップいたしますので、楽しみにしていてください!
Creative Director: Shogo Tominaga @shogo_tominaga(LQVE)
Web Designer: Hiroaki Nakano @HiroakiNakano
Web Front-End Developer: Keita Yamada @P5_keita
2. 富永省吾

LQVEに続いて中野さん+Keita Yamadaさんのタッグで制作された富永省吾さんのポートフォリオサイト。
LQVEではフッターの波形が特徴的だったのに対し、このサイトで特徴的なのが画面中心に鎮座するヘッダー。メニューを開くとスマホ画面のようなイメージでコンテンツが表示され、背景動画の上をスマホ画面でコンテンツをみていくという不思議な閲覧体験を楽しめます。
そしてこのヘッダー、Works詳細になると機能的ヘッダーに変化します。Worksの延々と横にスクロールしていく見せ方も面白いです。
emuniのサイトもそうでしたが、ポートフォリオサイトの仕組みから再定義をしなおしているようなサイトですね。中野さんいわく、とことん悩みながら作り上げたLQVEと正反対で、迷いなくスムーズに作ることができたのだとか(こちらも詳しくはインタビューで!)。
Web Designer: Hiroaki Nakano @HiroakiNakano
Web Front-End Developer: Keita Yamada @P5_keita
3. 『広告』 CASE #01 領域侵犯合法化。

雑誌『広告』がリニューアル。表紙3種展開や九段理江さんの「95%AI小説」など、すでにワクワクさせられっぱなしですが、ウェブサイトも負けず劣らず感嘆のクオリティです。
まるでサイトが何モノかに乗っ取られたかのような様相は、まさに「領域侵犯」で、「情報の取得」よりも「広告としての体験性」に振り切っています。
侵犯=イリーガルで、正しいも正しくないも関係ない、その先にこそ新しい表現があるのだ、と言っているかのよう。
侵犯するということは、否定されても新しいことにチャレンジするということ。そういう意味でも、センセーショナルでありながら、サイトの目的としてブレがなく真っ当なサイトだと思いました。
あと、面白いと思ったのが、テキストが読みにくいのに、なんとなくは伝わるところ。これも、文章中の文字を入れ替えても読めるという現象を思い起こさせますし、「読みにくい」=「意外と読める」という発見も、読みにくさのチャレンジをすることで生まれるのだな、と。
Producer / Planner : 山中 雄介(株式会社 米)@komeusk
Project Manager : 篠原 駿(株式会社 米)@shunshinohara
Art Director / Designer : 原 英寿(Sunny Inc. / Nauts™)@suuuunnnnnnny Developer:池田 亮(devdev Inc. / Nauts™)@ikeryou
4. 採用情報|株式会社ベイジ

「採用サイト」と聞くと、社員さんの写真があって、コピーがあって、インタビューがあって…と想像するわけですが、このベイジさんの採用サイトを拝見すると、そういった採用サイトにおける一種の「イメージ」をフラットにさせてくれるんですよね。
・FVにて、ベイジの特徴を3行程度+募集職種までを見せる。
・各メニューは「会社」「仕事」「社員」「職場」など、一切装飾なし。
・各一覧ページもタイトルはシンプル、サムネイルはなし。
・インタビュー詳細ページは見出し以外、箇条書き。写真もなし。
など、とことん余計なものを削ぎ落とした、伝えたいことだけをミニマムに伝えたつくりになっている。
かと思えば「1ページでわかるベイジ」「ユーザーが最近チェックしたページの表示」「他の社員の声」「記事読了時間」など、他にはないベイジさんらしい機能やコンテンツもあり、シンプルに伝えるべきことを伝えるという意識が、結果的に他の採用サイトで見られない機能やコンテンツへと結びついているところが面白いですね。
コンテンツを伝えるにあたって、余計な装飾なしに、大事な本質のかたまりだけを、シンプルに伝える。ということを改めて認識させられたサイトでした。そもそもサイト名が採用サイトではなく「採用情報」というところにすべてが現れていますね。Studioでの制作というところもポイントです!
制作:baigie inc.
5. 小袋成彬

ミュージシャンである小袋成彬さんが、5月25日に控えるさいたま市長選挙に立候補。サイトも公開されていました(このサイトの公開ポスト自体がバズっていました)。
今回の市長選挙の候補者の方のサイトを調べてみたのですが、全候補者8名のうちサイトが存在しているのが、現市長の清水勇人さんを除くと、小袋さんと澤田良さんのおふたり。お名前を出した御三方は、YouTubeチャンネルもやられています。選挙に立候補する方がサイトでマニフェストを公開する流れが増えてきていますね。
小袋さんのサイトは、スマホに最適化されており、スローガン、ビジョンと政策、ロードマップなどが整理され、とてもわかりやすくなっていて驚きました。コンテンツが整理されているから、小袋さんのマニフェストやメッセージがわかりやすく伝わりやすい。デジタル界隈に身を置くものとしては、今回の市長選挙のデジタルPRがどういう結果になるかも含め、静観していきたいと思います。
Ryo Nakae @ryo_dg
6. DAY LOOG

フロントエンドエンジニアであるTomoya Okadaさんの個人ブログサイトです。Okadaさんがフロントエンジニアということで、microCMSをベースにThree.jsやGSAPなどの各種技術を活用して演出の効いたサイトになっているところが特徴的です。
また、コンテンツも日常からフロントエンジニアとしての挑戦と成果、不安などが素直に書かれており、アニメーションに関する投稿をしているSNSも含め、ポートフォリオ、ブログ、SNS全体でOkadaさんのことを知ることができるところも良いですね。
制作:tomoya okada @__o_state
7. VECTIV

ひと目見て「かっこいいサイトだ」と思いました。画像のジャギー的表現や、テキストのまるで走っているかのようなタイプライティング的表現。ガジェット風機能の表現。ファイルサイズまで表示しているギャラリーに、menuのサイトマップ的見せ方、インタビューのツリー構造になっている見せ方……。デザインで新しいチャレンジをしようとしている意気込みが伝わってきました。制作にかかわったShed Inc.の方が「GitHubを連想させるUIデザインがお気に入り」と仰っていて、なるほど、詳しくは聞いてみないとわかりませんが、GitHubのようなイメージを持ちながらデザインを考えていくとサイトってこんなに面白くなるのか…と。そういえばベイジさんの採用サイトにはNotion的というコメントもありましたね。
制作:Shed Inc.
8. Magazin Layout

NEWTOWNさんがモリサワさんのウェブセミナー用に作ったサイトで、犬飼さんいわく「雑誌をデザインソースに、書体の見本帳となるようなウェブフォントを複数使用して制作した」のだとか。また、コンセプトは「ウェブに活かせる雑誌デザインの技術」で、雑誌の考え方をウェブに取り入れてみようと考えていた、とも。それは興味深い!
2000年代からのフォントの流行りの流れを交えつつ、いくつのフォントの紹介と使い方のコツや実践をサイト内で行っていて、このサイト内でサイトに対する言及をしているメタ的なところがNEWTOWNさんらしくて面白い。フォントを一から学ぼうと思うとどこから手をつけていいか分からなくなりそうですが、こういうピンポイントなところから教えてもらえると、楽しくフォントのことをもっと知りたくなる。そんなサイトですね。NEWTOWNさん、ぜひ、定期的にこういうものをつくる余裕をつくってください!
制作:犬飼崇(NEWTOWN)
9. かわかみゆいか

かわかみゆいかさんのポートフォリオサイト。かわかみさんはポートフォリオサイトを「=実績」ではなく「=自分自身」と捉えていて、その前提で見ていくと、サイトがまるで人に思えてきて面白い。(サイトが公開された3月23日時点で)転職活動中ということですが、ポートフォリオとはバーチャルな自分自身であって、採用担当者も作品だけではなく人を見ているはず。と考えると、ポートフォリオサイト=自分自身と捉えることは、とても本質的なことですよね。
制作:かわかみゆいか
10. MeUMU

きたがわさんこと北川太我さんが制作するサイトに顕著なのが、あたたかみのあるイラストレーションと、サイトのコンテンツとデザインでメタ的表現をしているところ。例えば他のサイトでも、「人物のスウェットのプリント内でコンテンツが展開(ktgw illustration)」、「人物がのぞくテーブル内でコンテンツが展開(caroa 4th anniversary)」など。今回は、人物たちと資料の中でコンテンツが展開される、という構成になっており、やっぱりこのメタ的表現が面白いです。クライアントがイベント企画会社ということで、一枚の紙を囲んで会話をしている様子を表現しているわけですね。
Direction/プロメテ・メディアデザイン株式会社
Design, Illustration, Studio/北川太我
11. Japanese Flash Web Design Archives

Flashという、インターネット初期から中期にかけて隆盛を極めながらも技術の流れとともに消えてしまった技術と表現を、当時のキャプチャ+Internet Archiveを駆使してアーカイブ化したサイト。中村勇吾さんをはじめ、当時のクリエイターたちのものづくりに衝撃を受けてサイト制作をはじめた人たちも多いと思うのですが、これはただの懐古ではなく、当時の時代の熱量を振り返って、存在を認め、当時の時代性を感じながら、AIが猛威を奮っていくこれからに向けて、何を作っていけるのか。それを考える上でも、2025年の今、2000年〜2010年代の流れをかたちに残しておくことは、とても意義があることだと思いました。
制作・運営:Tters
おわりです!
2025年3月のまとめサイト、いかがでしたでしょうか。
3月はTHREE Inc.中野さんとKeita Yamadaさんがタッグを組んだお仕事をいくつも拝見しました。この「LQVE」と「富永省吾ポートフォリオ」に関しては、ぜひ並べて紹介したいと思ったので、そうさせていただきました。
文中でもお話ししましたが、中野さんに関しては別途インタビューをさせていただいてまして、かなり近いうちに公開されることになりますので、ぜひご一読いただけたら幸いです。
また「広告」のサイト、「ベイジ採用情報」はそれぞれまるで正反対の位置にあるようなサイトで、どちらのサイトの在り方もほんとうに面白く、本質的だと思います。編集部ももっとこんなサイトが見たいです。
4月も中旬で、すでに面白いな〜!というサイトがいろいろ公開されていますね。今からすでに楽しみです。
ではまた、来月お目にかかりましょう。
iDID Magazine編集部でした!